2016年6月7日火曜日

北欧デザインとアートの旅 ①建築クルーズ

最近、北欧の建築やデザインが気になり、思い立ってコペンハーゲンに行ってきた。

東京では早くも真夏日が観測されていた5月下旬、デンマークでは春が始まったばかり。街中の新緑が鮮やかで、色とりどりの花が咲いている。北欧の春は足が速いのか、到着した日には薄手のコートが必要だったのが、翌日、さらに翌日にはどんどん暖かく、日差しが強くなり、初夏のような陽気になった。

北欧の中でもデンマークは、モダン様式の手本とされるアルネ・ヤコブセンや、シドニー・オペラハウスのヨーン・ウツソン、「イージーチェア」のフィン・ユールなど、優れた建築・家具デザイナーを輩出している。

ヤコブセンの建物や、ちょっと洒落た北欧デザインは、コペンハーゲンの街を歩くだけでもある程度見ることができる。

でも今回はプライベートボートをチャーターし、運河から街を見てみることに。このクルーズでは、有名な建築物だけでなく、コペンハーゲンに暮らす人々のライフスタイルや住宅トレンドも垣間見ることができる。

ボート乗り場は、カラフルな建物群が並ぶニューハウンにある。この辺は昔は歓楽街で、お客が行きつけの店をすぐに見分けられるよう、それぞれの店が違う色にペイントしたのが今でも残っているのだそう。現在は健全なカフェやレストランが並ぶ人気の観光地。


運河に出てまず目に入るのは新しいデンマーク王立劇場。水上にせり出したプラットフォーム上で、レイヤーごとに色とデザインが異なるガラスが美しく光る。

次は「ブラック・ダイアモンド」王立図書館。黒い花崗岩で覆われた直線的な外観からそう呼ばれる。

コペンハーゲンは、ガラスを多用した、スタイリッシュで触ると冷たそうな新しい建築と、暖色系の歴史的な建築が共存して一つの街並みを作っている。

倉庫街のクリスチャンハウンには、あのNomaが入っている古いレンガの建物もある。

余談だが、Nomaは今年いっぱいで一度クローズし、来年、同じエリアの別の場所に新しい店をオープンする。アスファルトを掘り起こして土の畑を作り、屋上にグリーンハウスを設置したアーバンファームの中に店を置くという。新北欧料理を世界的な流行にまで高めたNomaの新たな挑戦が、また新しい流れを作るのかも。

更に運河を進み、デザインマンションが並ぶ新興住宅地へ。市内中心から近いこの辺りには、比較的裕福な若い世代が夫婦や家族で暮らす。どのマンションでも、バルコニーには必ず椅子とテーブルがある。夏が短い北欧の人々は、貴重な太陽の光を浴びる機会を逃すことがないよう、なるべく外で過ごすのだそうだ。ちょっと驚いたのは、こうした新しいマンションには必ず船着き場があり、素敵なモーターボートが係留されていること。ベニスのゴンドラのように、自宅から直接自分のボートで運河に出るのだ。自転車代わりに。なんて素敵な生活。


最後は「光の巨匠」ヘニング・ラーセンが設計したオペラハウス。
ちょうどマチネをやっていたのでロビーに入ることができた。




外光に溢れ、曲線と直線が交差するロビーは、不思議な船の中のようだった。



クルーズの途中、有名な人魚姫の像を背中から見た。像の向こうでは、たくさんの観光客たちが小さな人魚姫の写真を撮っていた。それもいいけど、運河に出れば、もっと色々なコペンハーゲンが見られるのに!と思いながら通り過ぎた。