2020年10月29日木曜日

立川でアート・ハンティング

ドナルド・ジャッドの遺作が立川にあると知ったのは最近のこと。なんで立川に?という驚きと同時に興味が湧き、行ってみた。

立川駅北口の複合施設エリア「ファーレ立川」は、知る人ぞ知るパブリック・アートエリア。109の現代彫刻があり、全て公道上で見ることができる。現代というより20世紀アートと言った方が適切かもしれない。1994年、米軍基地跡地の再開発で生まれたその街のために、36カ国92人のアーティストたちが作品を寄せた。その中にはジャッドのように世界的に知られたアーティストも少なくない。

実際に歩いてみると、個性的な作品に彩られた街は楽しい。あちこちの車止めにも遊び心満載。



かなり存在感があるアートが街にすっかり溶け込み、当たり前になっているその雰囲気にシュールさも感じる。高さ4メートル近いこの巨大なショッピングバッグは換気口カバー。


大きな植木鉢の手前にある自転車はロバート・ラウシェンバーグの作品。駐輪場の看板で、夜になるとネオンが点灯する。


ニキ・ド・サンファルのベンチ。この人の創作活動はガウディのグエル公園にインスパイアされたと知り、とても納得する。


鉄でできたアニッシュ・カプーアの「山」。赤土のグランドキャニオンを思い起こす。鏡面の作品の印象が強い人だが、こういうのも作っていたのか。

宮島達男の作品は残念ながら故障中。でも一目で彼の作品だということはわかる。


大好きなフェリーチェ・ヴァリーニの作品も二つ。こんな近くにあったことを今まで知らずにいたなんて。きれいな円は一点からしか見えない。彼の作品は空間に突然物質を生み出す魔法のようで、わくわくする。



今年ニューヨークのMOMAで回顧展が開かれているドナルド・ジャッド。立川にある彼の遺作は、二つに仕切られた7つの箱が壁面に並んだもの。ミニマリズムと定義されるのを本人は嫌ったらしいが、直線と原色で構成されたジャッドらしい作品。作品の完成前に亡くなったジャッドの遺志を継ぎ、彼が病床で作ったプラン通りにアシスタントたちが完成させたそうだ。「無題」なので、ジャッドが立川に向けて込めたものを想像するのは難しい。


ファーレ立川では、わかりやすい紙のアートマップの他、専用アプリも用意されている。今回はアプリをダウンロードして廻ったが、これがなかなか便利だった。作品の近くに行くと自動的にその作品の説明が表示されるので、素通りしそうになっていた作品に気づくこともある。2時間弱で109の作品を全て制覇できた(と思う)。しかし、アプリが突然強制終了してしまうこと数回。バッテリーも消費が早くなるので、その点はご注意。


もしくは気ままに歩き、好きな作品との出会いを待つのも楽しいはず。立川は贅沢なアート散歩ができる街だった。