2020年10月5日月曜日

武蔵野の石の要塞と、銀のどんぐりの森

その建物の写真を見て、実際に見てみたくなり出かけた所沢。

初めて降りた東所沢駅から、普通の郊外の街並みを歩いて約10分。公園の向こうに、巨大な石の塊が出現する。

どこから見ても非対称な変わった形で、窓がない(ように見える)建物は要塞を思わせる。一見、どこが正面かもわからない。

これは今年8月にプレオープンした「角川武蔵野ミュージアム」。設計は隈研吾氏。美術館、博物館、図書館を併せた新たな文化複合施設として11月にフルオープン予定。マンガ・ラノベ図書館やアニメミュージアムが入るほか、現代アートの企画展なども行い、サブカルチャーファンをターゲットとする。

プレオープン期間中は「隈研吾/大地とつながるアート空間の誕生 石と木の超建築」展を開催(10月15日まで)。1年前の2019年に竣工した国立競技場が隈氏の木の建築の集大成であったのに対し、このミュージアムは石の建築の集大成だとわかる。

複雑な建物は61面の三角形で構成されているそうで、外側を覆う花崗岩のタイルの表面は「割肌(われはだ)」という、職人が割り出したままの荒々しさを敢えて残している。遠くから見ると冷たい印象だが、近くで見る肌目には温かさも感じられる。



さて、隣の公園には、チームラボの「どんぐりの森の呼応する生命」という常設展示がある。ここは本当は夜行くのが正解なのだが、行ったのが昼間なので仕方ない。明るい森を見ていくことにした。森の中に銀色のダルマみたいなオブジェが不規則に並んでいて、手で押すと、起き上がりこぼしのように揺れて「ほわん」とした不思議な音を出す。音は周囲に拡がり、その反響の中を散歩する、という趣向。夜になるとこのダルマは様々な色に光る。そしてたくさんの訪問者が出す音が森の中で反響しあい、光と音に包まれて美しい夜の森を散歩できるのだろう。すいている平日昼間に、ひとりで起き上がりこぼしを押しては音を聞いても、正直、あまり盛り上がらないので、夜間の訪問を強くお勧めする。

ちなみに、オブジェには手で触れるため、入り口でビニールの手袋を渡される。これも新しい鑑賞作法。

一帯の「ところざわサクラタウン」は、角川が「クールジャパンの拠点」として開発を進める。アニメ聖地巡りの札所となっている神社や、アニメホテル、イベントホールなどもある。今後、人の流れが変わるかもしれない。