2020年10月26日月曜日

イアン・シュレーガーの美空間 東京エディション虎ノ門

最近、東京のラグジュアリーホテルのオープンが続いている。 今月も日本初上陸となるEditionブランドのホテル、「東京エディション虎ノ門」が本オープンした。

建物の設計は隈研吾(これも最近、一つのスタンダードになりつつある)。パブリックスペースも客室も、木を使ったシンプルで、少し和の要素を感じさせるデザインが特徴。

その器の中に、ブランド創設者のイアン・シュレーガーのこだわりがぎっしり詰まっている。あの伝説のニューヨークのナイトクラブ「54」や、80年代にデザイン・ブティックホテルの先駆者となったロイヤルトンなどの数々のホテルを手掛けた人物。

このホテルで最も特徴的で、最初に目に入るのは、そのロビーラウンジスペース。ビルの31階に位置するこのフロアに、ジャングルのように緑が密集している。緑が目隠しの役割も果たし、プライバシーとソーシャルディスタンスを保ってくれる。



ロビーバーのグリーンのボトルのディスプレイも美しいが、ここに限らず、ホテル内に置いてあるものやその置き方すべてにシュレーガー氏のチェックが入っている。それも、かなり細かく。棚に飾られたオブジェ類は言うに及ばず、例えばラウンジのソファや客室のベッドに無造作に置かれたラグ。それを見て「あ、たたみ忘れちゃったのね」などと思ってはいけない。決して無造作にあるのではなく、造作ありありなのだ。そのヒダのひとつに至るまでラグの置かれ方は決まっていて、スタッフはそれに従って毎日「無造作っぽさ」を再現する。シュレーガー氏が作る妥協なき空間に、彼の強い美意識と、ブランドを守り育てる者としての姿勢を見た気がした。(同時に、そういう人が上司だったら部下はものすごく大変かもしれない、とも思う。)

来年2月にはスペシャルティ・レストラン「Jade Room」と、バー「Gold Room」もオープンする。準備中の店内を見せていただいた。Jade Roomは屋外のウッドテラスから東京タワーを間近に臨む。Gold Roomは黒をベースとした内装にゴールドが差し色で効いた、とてもお洒落で素敵な場所。マンハッタンのバーを思わせる、まさにシュレーガー氏の美意識を結集した空間には、ここに座ってお酒を飲みたい!と思わせる魔力があった。