2023年10月9日月曜日

ドバイのアート地区

ドバイで質の高いアートホッピングを楽しむなら、アルサーカル・アヴェニュー(Alserkal Avenue)へ。

オープンは2008年。倉庫街だった場所がアートやカルチャーのハブとして再生された。現在は約20軒のアートギャラリーの他、デザインやアート、ファッション関連の企業やショップ、飲食店など計約80のテナントが入る。


訪れたのは気温40度を超える午後で人影はまばら。開いていたアートギャラリーを順に巡る。建物の中はエアコンでキンキンに冷えている(生き返る!)

ギャラリーによって扱うアーティストはインターナショナルだったり、中東、アフリカ、アジアなどの地域に特化していたり、新進アーティストから著名な現代アーティストまで幅広い。どのギャラリーもおしなべて作品のレベルは高く、展示も洗練されている。きっと中東各国や世界から訪れるハイエンドなアートコレクターを顧客に持っているのだろう。



でもアルサーカル・アヴェニューは、一部のコレクターだけをターゲットに作られたわけではなく、地元のクリエイティブコミュニティの創生や、アーティストの育成の拠点となることをミッションとして今日まで発展してきた。

立ち寄ったお洒落なカフェでは、自家製パンのサンドイッチのレベルも高かった。チェーン店を安易に入れず、厳選したローカルビジネスで固めているのがわかる。時間があればアート以外のお店もチェックしてみると、ハイブランドのショッピングモールとは違うドバイローカルの魅力を発見できるはず。

そんな文化的地区で暮らす猫は、灼熱の太陽の下、シャンとして行儀が良かった。


アルサーカル・アヴェニューの開発はこれからも続きそう。また行ってみたい。



2023年10月6日金曜日

ドバイフレーム

街中にそびえたつ黄金の額縁。未来的な高層ビルが並ぶドバイで「Museum of the Future」と同様に独自路線を行くその建物は「ドバイフレーム(Dubai Frame)」。


高さ150m、幅95m。巨大過ぎるし、周りとの調和など全くないマイペースさは、シュール過ぎて笑ってしまう。

2018年にオープンしたドバイフレームは、二本の垂直なタワーを水平なブリッジでつなぐ構造になっている。なんでも世界で最も高い額縁型建造物としてギネスにも認定されている(そりゃそうでしょうよ。他にもあるの?)

でも、ただ奇をてらっただけではなく、その形にはちゃんとした目的がある。額縁の3辺を使ってドバイの過去、現在、そして未来を見せるアトラクションなのだ。

見学は片方のタワーの低層部にある「オールド・ドバイ・ギャラリー」からスタート。漁村だった頃の様子や、当時の人々の暮らしや、市場の店の様子などが紹介されている。


そのタワーをエレベーターで上辺部分のスカイデッキへ一気に上がる。ガラス張りのエレベーターから見える景色に、ドバイって意外と緑が多いのねと思いながら。


高さ150mのスカイデッキは展望デッキとしては高くはないが、両サイドで対照的なドバイの「今」が見られるのがポイント。片側は開発が進み超高層ビルが建ち並ぶ風景。反対側は低層の建物が遠くまで規則正しく並んだオールドタウン。



もう一つの売りは一部がガラス張りになった床。額縁の下辺を見下ろせる。かなり強そうなガラスなので心配はないと思う…。


展望デッキを堪能した後は、上がってきたのとは反対側のエレベーターでまた一気に下り、最後は「フューチャー・ドバイ・ギャラリー」へ。ドバイの50年後くらい?の未来のイメージを没入型の映像と音声で体験する。これは臨場感があって楽しい!


ということで、ドバイフレームは見た目より中身がずっと真面目だった。外から写真を撮るだけでなく、是非入場してみると、知らなかったドバイの一面が見られると思う。


2023年10月1日日曜日

Museum of the Future

ドバイといえば超高層ビルが立ち並ぶ風景。中でも高さ828メートルの世界一高い(2023年時点)ビル「ブルジュ・ハリファ」に象徴される。

でも最近は高さ以外で注目される建物もあり、その一つがMuseum of the Future(未来博物館)。


アートオブジェのような外観に「これ建物なの? 中どうなってるの?」と目が釘付け。どこが正面かもよくわからないが、ミュージアムのロゴから判断するにこの写真は裏側らしい。

ここはその名の通りドバイの未来を展示したミュージアム。Shaun Killaが設計し、2022年2月22日にオープンした。ドバイ首長が未来について書いた詩を引用したアラビア文字が表面を覆い、ロビーに入るとそれが透かし模様になっていて美しい。


入場者はまず「スペースシャトル」で一気に5階に上がり、2071年の宇宙ステーションへ。約50年後の宇宙開発を垣間見る。


文字情報も結構多めな宇宙フロアから次へ進み、雰囲気が一変するのが「The Library」。数千の生物の種の「DNAライブラリ」という設定で、ずらりと並んだ3D標本が様々な色にライトアップされ、なんとファンタスティック! 説明の要らない未来のラボラトリー。

他のフロアでは未来のウェルネス、近未来テクノロジーなどのテーマが展示されている。2階からは屋外デッキに出て、ドーナツ型の建物の細いほうを間近で見られるのでお見逃しなく。


展示内容はまだ見ぬ未来のことなので、正直、ピンとくるものもこないものもある。最大の見どころは今は何といってもやはり、有機的な曲線で未来を示したこの建物だと思う。上に向かって伸びるドバイのビル群を後目に、この建物は未来でもユニークな存在でいるだろうか、それともスタンダードになっていくだろうか?




2023年9月14日木曜日

デイヴィッド・ホックニー展

東京都現代美術館で開催中の「デイヴィッド・ホックニー展」を見た。ホックニーの60年以上の画業を追った大回顧展だが、過去の振り返りよりむしろ、86歳にして進化し続けるホックニーの今に目を見張る。

ホックニーは都会の風景や肖像画のイメージが強い人かもしれないが、近年は色鮮やかな花や自然の風景を描いていて、そうした多くの作品が今回、日本で初公開されている。特に2010年以降手掛けてきたiPadドローイングが素晴らしい! 新しい手法に挑戦し、それを軽やかに自分のものにして世界を拡げているのがホックニーのすごいところ。


圧巻は長さ90mの大絵巻「ノルマンディーの12か月」。2019年以降、フランスのノルマンディーに居を構えたホックニーは、コロナ禍の2020年に220枚のiPadドローイングを作成し、それをつなぎ合わせてこの大作を完成させた。「お家時間」の使い方としてこれ以上のものってあるだろうか…。


ノルマンディーは多くのアーティストにインスピレーションを与えた土地で、モネなどの印象派の画家たちもその光と風景の瞬間を閉じ込めた作品を描いた。ホックニーは1年間に及ぶ定点観測と制作を経て、ノルマンディーの四季が美しく移ろう様を、物語のようにひとつの作品に仕上げている。端から端までたどるとノルマンディーに行きたくなる、そんな旅心を誘う絵巻。


出る頃にはすっかりホックニーファンになってしまった。


2023年8月3日木曜日

姫路で見たチームラボ

この夏、姫路でチームラボの展示を2つ見た。

ひとつは書寫山圓教寺で開催中の「認知上の存在」。966年創建の圓教寺は「西の比叡山」とも呼ばれ、海抜371mの山の上にある。ロープウェイで志納所がある山上駅まで、ガイドさんの説明を聞き、遠くは瀬戸内海までの景色を見ながら上る。

ロープウェイに同乗していたほとんどの人は、立派な伽藍が配置された広大な境内を歩いて廻るようだった。その日は35度越えの猛暑。私は迷わず志納所からマイクロバスに乗った。とはいえそれも途中の摩尼殿の近くまでしか行かず、そこからチームラボの展示がある食堂(じきどう)までは結構な上り坂を10分くらい歩くしかない。山なのだから仕方ないか。炎天下、とにかく素早く着くことを目標に速足で行く。

食堂は二階建ての仏堂としては最大で、長さ約40m。国の重要文化財に指定され、映画「ラスト・サムライ」のロケにも使われたという輝かしい経歴を持つ。

一歩中に入ると、焼けつくような太陽の眩しさからは隔絶された静けさ。展示室内はとても暗いので係の人が誘導してくれる。

展示作品は大雑把にいうと赤と白の二つ。いずれも食堂の長さを奥行として活かしている。白は「質量のない太陽、歪んだ空間」という作品。光で満たされたトンネルを手前から見る。光の明るさは常に変化し、境界線がはっきりしない。


赤いほうは「我々の中にある巨大火花」。こちらは奥まで歩いて行ける。奥にある球体の近くまで行って後ろを振り返ると、壁があるわけではないのに自分の影が目の前にあった。


境界の曖昧さ、認知している世界の不確かさが二つの作品の共通のテーマ。目まぐるしい動きはなく、鑑賞者を静かに迎える瞑想の空間のようだった。


さて、ロープウェイで下に降り、今度は姫路市立美術館へ。世界遺産・姫路城を臨むレンガ造りの建物。ちょうど中谷芙二子氏の「霧の彫刻」が出現するタイミングで、外国人観光客の親子が嬉しそうにミストを浴びて涼んでいた(たぶん彫刻とは思ってない)。


ここで並行開催されているチームラボの展示は「無限の連続の中の存在」。展示は5つのエリアに分かれている。

カラフルなドットが躍るフォトジェニックな空間もその一つ。手で触れるとドットがバラバラになり、また近い点同士が自然に揃っていく「引き込み現象」、つまり秩序の形成を表現しているとのこと。


様々な植物が生まれて花を咲かせ、やがて枯れていく様子を繰り返し描いた作品は、美しさと儚さ、生命のサイクルを感じさせる。

そして一番奥の部屋にいるのは、人、それとも神?

姫路の二つのチームラボ展は、存在とか生命とか無限とか、そういうことをちょっと考えさせる体験だった。


2023年7月6日木曜日

Jewel at Night

シンガポールのチャンギ空港から夜のフライトに乗る前、少し早めに着いて「Jewel」へ。「Rain Vortex」がカラフルにライトアップされていた。


白く降り注ぐ昼のRain Vortexも迫力があるが、夜もなかなかいい。


8月中旬まではMarvelとタイアップしているらしく、入り口にアイアンマンの巨大フィギュアがあった。20時に始まった光と音のショーでもMarvelのヒーローキャラクターたちが次々に浮き上がる。きっとMarvelファンにとってはたまらない。ファンじゃなくてもショーは5分程度で終わるので飽きない。こういう滝の使い方もあるのねと感心しながら見る。



Jewelはターミナル1に直結、ターミナル2、3にも連絡通路を歩いて行けるので、フライト前に楽しめる。

2023年7月1日土曜日

仮想現実でアート鑑賞

シンガポールのザ・リッツ・カールトンは4200点ものアートコレクションを持つことで知られる。以前は館内に展示された作品の見どころを紹介した紙のパンフレットが用意されていたが、最近、数年ぶりに滞在した際には「ARアートツアー」が登場していた。


コンシェルジュデスクでQRコードをスキャンし、ブラウザでページを開く(アプリダウンロードは不要)。まずはロビー天井から吊り下がるフランク・ステラの「Cornucopia」を試す。ちなみにこの作品はファイバーグラス製で重さ3トン、デザインはサンバイザーから着想を得たそう。

作品の前に立ってスマホを左右に動かし続けるとARが始動する。するとパタパタパタっという効果音とともに、スクリーンの中で現実の作品の前を仮想の蝶が飛び交った。「おお!」と見とれていると、シャッターボタンが表示される。なんと写真や動画も撮れる親切設計。


ARの立ち上げにはちょっとしたコツが必要なようで、最初はいくらスマホを動かしてもなかなかARが立ち上がらない。上を向いてスマホをかざしてウロウロしていた時、取引先の人に声をかけられた。私、かなり挙動不審な感じだったんじゃないかと後で思う。

ARで何が出てくるかは、やってみるまで分からない。Zhu Weiの「Greater Water」という絵の前では、絵と同じ色と鱗の魚が泳ぎだした。


ステラのもう一つの作品「Moby Dick」。


このシリーズにはハーマン・メルヴィルの「白鯨」へのオマージュが込められているという。出てきたのは…

つぶらな瞳。


これ、シロイルカじゃない???

「白鯨」ってそんな話だっけ? いやシロイルカでは壮絶な闘いになるはずがない。あれはマッコウクジラ。

1980年代から90年代にかけて制作されたステラの「Moby Dick」シリーズは、138点の絵画や彫刻等から成り、それまでのミニマリスト・スタイルから作風が大きく変わったターニングポイントとされる。ステラがメルヴィルの「白鯨」を崇拝し、影響を受けたのは確かなようで、138点というのはメルヴィルの小説の章の数(135章)に呼応している。

じゃあどうしてシロイルカが呑気そうに泳いでいるのか?

リッツの作品解説をよく読むと、ステラに最初にインスピレーションを与えたのは、ニューヨーク水族館で見たシロイルカだったとある。なるほど! ごめん、君は間違いじゃなかったのね。

…といった細かいことは気にせず、ただARを楽しむだけで一味違うアート鑑賞ができる(きっとそのほうが正しい)ので、一度お試しを。