2016年9月16日金曜日

La Mamouniaのアート散策

今回マラケシュで滞在したLa Mamounia(ラ・マムーニア)は、1923年創業の歴史あるホテル。伝統的なモロッコ建築と装飾が美しい。

La Mamouniaはモロッコアートの展示にも力を入れており、館内を散策しながら、優雅な装飾とともにアートも鑑賞できる。

まずチェックしたいのは「マジョレル・ギャラリー」。夜は生演奏もあるラウンジスペース。


ホテルの人に聞いて知ったのだが、あのマジョレル庭園を作ったジャック・マジョレルは、ラ・マムーニアの最初のインテリアデザイナーだったとのこと。そういうわけで、ここにはマジョレルが描いた天井画がある。

別のスペースにはモロッコの伝統衣装のイラストの展示も。




企画展示も常に行われており、各客室フロアの廊下に人物、風景、植物など様々なモロッコの写真が並んでいた。

モノクロームの写真は先に訪れたメゾン・ド・ラ・フォトグラフィを思わせるが、ホテル内に展示されたのは昔撮られたものではなく、現代の作品。フロアごとにひとりのフォトグラファーの作品が展示されている。

ロビーエリアにはモロッコの風土を描いた絵画が多く、中にはこんなコンテンポラリーな作品もさりげなく飾られている。




庭園も見逃せない。

モロッコにはこんな真っ赤なサボテンが!と一瞬思ってしまったが、遊び心あるスカルプチャーが植え込みにまぎれていたのだった。

美術館並みに楽しめるホテル。限られた滞在の時間をより充実させてくれた。







2016年9月14日水曜日

マラケシュ メゾン・ド・ラ・フォトグラフィ

マラケシュの旧市街メディナにある「Maison de la Photographie」は、昔のモロッコをテーマにした写真美術館。19世紀終わりから20世紀半ばまでのモロッコの風景やポートレート写真を展示している。

フランス人が撮影したものが多かったと記憶しているが、有名な写真家による地元の人のポートレートも、無名の旅人が街角の日常を捉えた写真も、どれもが当時のモロッコの様子を伝える貴重な資料。吹き抜けの3階建ての小さな建物にも、モロッコらしい様式と装飾が見て取れる。


ポートレートの人物の意志のある目にハッとしたり、セピア色の風景写真に不思議な懐かしさを覚えたり。

モロッコの歴史や文化を知るための博物館はあまたあれど、メゾン・ド・ラ・フォトグラフィの写真たちは感覚に訴えてきて、近世のモロッコの姿が印象に残る。

カフェがあるルーフトップからは旧市街を一望できる。絶景ではないけれど、違う視点から街を見られるスポットとしても覚えておきたい。



2016年9月13日火曜日

イヴ・サンローランのジャルダン・マジョレル


初めて訪れたモロッコ。今回はマラケシュで開催される「Pure」という旅行のトレードショーに参加するのがひとつの目的。

マラケシュに到着寸前の飛行機から見下ろした赤い砂丘に、砂漠の国のイメージが膨らむ。


そしてマラケシュのメナラ空港の、未来のオアシスを思わせる幻想的な美しさ。長いフライトの疲れを忘れた一瞬。



今回の私のマラケシュ訪問のもうひとつの(というより、実は最大の)目的は、Jardin Majorelle(マジョレル庭園)へ行くこと。イヴ・サンローランの庭園としての知名度が高いここは、もともとジャック・マジョレルというフランス人の画家が半生を費やし、世界中の旅先から様々な植物を持ち帰って作り上げた庭園。彼が作らせた建物の鮮やかなブルーは、「マジョレル・ブルー」と呼ばれ、庭園を更にエキゾチックな場所にしている。

サンローランとパートナーのピエール・ベルジェは、旅行で訪れたこの場所を「マティスが使った色が自然と融合した空間」と呼んで惚れ込み、取り壊されそうになっていたのを阻止して自分たちで買い取ってしまったほどだった。

色彩やフォルムに対し人並み外れた感性を持っていたはずのサンローランがそこまで愛した庭園がどんなものだったのか、とても興味があった。

庭園内は竹林に始まり、シダやサボテンやヤシなど様々な異国の植物が生い茂り、乾いた空気と澄んだ青空の下、熱帯雨林とは異なるワイルドさを醸し出す。


テラコッタ色が混ざったピンクに彩られたマラケシュ市街にはない、強い色のコントラストは、確かにマティスの絵を思わせ、異国の中にある異国ともいえる独特の世界。サンローランがこの庭園に出会った1966年は、原色と直線で構成された「モンドリアン・ルック」を発表した1年後。惹かれる要素があったことも想像できる。

敷地内の「Love Gallery」には、サンローランが毎年「Love」をモチーフに作成した新年のグリーティングカードが飾られている。面白いことに切り絵の手法などはマティスそっくり。


ジャルダン・マジョレルは普段は各国からのツアー客も多く、入場待ちの行列もできる。

訪れた日はちょうどイスラム教のEid al-Adhaという大きな祝日に当たり、町中のほとんどの店やビジネス、観光地も休み。街は静かで、タクシーも流していない。でもジャルダン・マジョレルに問い合わせたら、通常より1時間遅い9時から開園とのこと。これはむしろ絶好の機会。ホテルで車を手配してもらい朝一番で出かけた。案の定、上品なフランス人のツアーグループ一組がいただけで、すいている庭園を落ち着いて散策できた。

2017年秋にはここにイヴ・サンローラン美術館もオープンする予定。

イヴ・サンローランの記念碑が奥にある



2016年6月11日土曜日

上海 西岸ミュージアム巡り

6月初めに上海を訪れた際、ウェストバンドへ行ってみた。

ウェストバンド(West Bund)、または西岸と呼ばれる地域は、外灘(バンド)から黄浦江沿いに南下したところで、市内中心からタクシーで30分程度。川沿いの遊歩道は市民の散歩道になっている。それ以外は車の通行量は多いが、観光客が見るべきものは目につかない。

でもここには、注目すべき現代美術館が二つある。

一つはLong Museum (龍美術館)。


中国の資産家でアートコレクターのオーナー夫妻のコレクションを展示。浦東館に続いて2014年にオープンした西岸館は、ウォーターフロントのコンクリートの建物。看板も通りからは目立たず、一見、倉庫かと思う人気のない雰囲気だが、これは意図してデザインされ、この美術館のために作られた建物。
Long Museum入り口

吹き抜けになった2フロアを使ってオラファー・エリアソンの個展「Nothingness is Not Nothing At All」をやっていた。彼の作品はあちこちで目にするが、大きな個展に出会う機会は少ないように思う。中国でそれに出会えるとは。1990年から現在まで、スペースを生かした大型のインスタレーションから、スカルプチャー、ペインティング、写真など、エリアソンの様々な作品が展示されていた。
上の写真の右半分の覆いの内部が下の写真の展示


もう一軒は、Long Museumから歩いて15分くらいのところにあるYuz Museum。


インドネシア系中国人の起業家でありアートコレクターのBudi Tek氏が設立した美術館。

ここではアルベルト・ジャコメッティの大回顧展を開催中。ジャコメッティの回顧展としては中国初で、パリのポンピドゥー美術館で2007年に開催されたものに次いで世界最大規模だそうだ。

250点もの作品が展示され、彼の特徴的な針のような人物の彫刻に至る過程として、キュビズムやシュールレアリスム、人の頭の像の制作に没頭した時期などの作品も時代別に紹介されている。ジャコメッティによる風景画や舞台装置などもあり、普段見る機会がないジャコメッティが見られる。

そしてあの細い人物の彫刻は、デフォルメされたものではなく、ジャコメッティが遠くから見たままの人の姿を忠実に再現しようとした結果だったということも知り、作品の見方が少し変わった。


Yuz Museumには気持ちのいいカフェスペースもあり、アート鑑賞の前後に寄るのもいい。


今回は上海の西岸で、西洋のアーティストのいい回顧展に二つも出会えた。いずれも平日夕方はほとんど人がいなくて、静かに鑑賞できたことも収穫。

その後、たまたまヨーロッパのホテルチェーンの人と話をした際、この西岸エリアに新しいホテルを2017年にオープンする予定だと聞いた。周りにレストランやショップも入るらしい。

エリアとしてはますます面白くなりそうな西岸。一方、静かなアート鑑賞をするならお早めに。


北欧デザインとアートの旅 ⑤グルントヴィークス教会

コペンハーゲン郊外にある、グルントヴィークス教会(Grundtvigs Kirke)。20世紀初めの表現主義様式で実際に建てられた教会の珍しい例とされる。


教会の名前は、19世紀の著名な哲学者兼政治家のグルントヴィから取られた。デンマーク人建築家Peder Vilhelm Jensen-Klintの設計で、建設は1927年から13年間に及んだ。

西正面の特徴的なデザインはパイプオルガンに似ているとされるが、空に向かってそびえるその姿には、圧倒的な印象を受ける。

1800人も収容可能な教会の内部はゴシック様式で作られているが、とてもシンプルな美しさ。


そして、さすが北欧、椅子へのこだわりも忘れていない。


北欧デザインとアートの旅 ④ARKEN

ARKENは、コペンハーゲンの中心から南に20kmの海辺にある現代美術館。


周囲を水で囲まれた「アート・アイランド」上にある美術館へは歩行者用の橋が伸びている。ARKENは1996年にオープンし、地域のカルチャーハブ化の先陣を切る予定だったが、周りは再開発が追い付いておらず、何もない。また、行ったときは知らなかったが、島の形になったのは今年(2016年)になってから。それまで建物の周りにあった茂みを撤去し、カフェからビーチを臨めるようにしたそうだ。建物自体は20年経ち、外観は少し古びているが、橋を歩いてアプローチしていく間に期待感が高まる。

コレクションは1990年代以降のコンテンポラリーアートが中心。デンマーク、北欧のアーティストの他、アイ・ウェイウェイやダミアン・ハーストなど、インターナショナルアーティストの作品も多く所蔵する。

もちろん、コペンハーゲン生まれのオラファー・エリアソンの作品も、入ってすぐのところに展示されている。



今回は20世紀のデンマークのアーティスト、ゲルダ・ウェイナー(Gerda Wegener)の回顧展を学芸員の方に案内して頂いた。アカデミー賞助演女優賞を受賞した映画「リリーのすべて(Danish Girl)」のモデルとなったカップルと言えば、ピンと来る人が多いかもしれない。


80年以上前に世界で初めて性転換手術を受けた、夫で風景画家だったアイナー(リリー)と、それを支えたゲルダの話は、映画などに任せてここでは述べないが、これまでデンマークでもほとんど回顧展が開催されることがなかったゲルダが、ハリウッド映画によって注目され、故郷で再び脚光を浴びることとなったのは興味深いと思う。

イラストレーターとしても活躍したゲルダは、多くの広告を手掛けた。当時、イラストレーターは芸術家と見なされていなかったことも、ゲルダの評価を遅らせることにつながったのかもしれないが、彼女の作品は、現代にも十分通用する洗練されたテイストがあり、才能ある人だったことがわかる。





ゲルダがリリーをモデルにした絵画は数多いが、これは男性画家としてのアイナー、女性としてのリリー、そしてゲルダ自身が一枚に収まった珍しい作品。


また映画で、リリーが自分の中の女性に気づくきっかけとなったバレリーナの絵の実物も展示されていたが、これは実際にはリリーがカミングアウトした随分後に描かれたものだったそう。


初めて見たゲルダの作品も、学芸員の方にその背景の説明を受けたことで、とても見応えがある体験となった。やはり、人に一対一で説明して頂くことには、オーディオガイドでは得られない価値がある。

ARKENは中長期的に、周りにスカルプチャーパークを建設し、訪れる人が触ったり中に入ったたりしてインタラクティブに楽しめる空間を作ることを計画している。これからも発展を続けるARKEN、また訪れたい。

北欧デザインとアートの旅 ③デザイン・ミュージアム

コペンハーゲンにはインテリアやデザイン雑貨のショップがたくさんあり、また、空港やレストランなどの公共スペースでも、洗練された椅子や家具を目にすることが多い。

そんな北欧デザインが集まったデザイン・ミュージアムへ。


ここはもちろん北欧のデザインが中心だが、世界のデザインも展示している。建物の前にあるのは、BMWとスイスのデザイナー、アルフレド・ハベリが組んだ「Spheres」という企画展示。

中に入ると、椅子、椅子、椅子。


有名なパントンチェア。いかにも北欧らしい色。


更に、椅子、椅子、椅子。


椅子ミュージアムと言っても言い過ぎではないくらいの、椅子の比重の高さ。

北欧デザインは必要から生まれたものだと聞いた。北欧の冬は長く、太陽の光も少なく、家の中で過ごす時間が長い。自宅で快適に過ごせることがとても大切だから、家具のデザインにも人一倍こだわる。だから長時間座っていたくなる椅子を追究するのも、理解できる。


日本のデザインもまた、北欧のデザインに影響を与え、また影響を受けてきた。このミュージアムは日本のデザインのコレクションは比較的厚く、常設で展示している。海外に行ってこういうものを目にし、その良さを再発見することが時々ある。

椅子を見に行くのも、北欧の中の和のエッセンスを探しに行くのも、面白い。