2013年5月19日日曜日

印象派たちの光と色~パリ マルモッタン・モネ美術館

今回の印象派の旅の締めくくりには、クロード・モネの「印象・日の出」を外してほかにないと考え、パリ16区のマルモッタン・モネ美術館を訪れた。ブローニュの森に近く、他の観光地からは離れた場所にある。

同美術館は世界最大のモネの作品コレクションを保有している。もともとはフランス第一帝政時代の美術品が中心だったが、1957年に印象派の芸術家たちと交流があった医師のコレクションから、モネの「印象・日の出」を含む多数の印象派作品の寄贈を受け、さらに1966年にモネの息子から父親の作品群を寄贈されてからは、モネの美術館として知られるようになった。今は1階のフロアの約半分がベルト・モリゾを中心とする印象派コレクションの展示、そしてあとの半分が、モネ作品だけを集めた展示スペースとなっている。

手前の大きなフロアには、「睡蓮」シリーズなどジヴェルニー時代を中心に比較的大型の作品が並ぶ。モネらしいたくさんの色彩で描かれた自然の風景。

「印象・日の出」は、その奥の別のコーナーにひとつだけ展示してある。(印象派の名前の由来となった芸術的意義を考えてのことか、80年代に盗難にあった教訓を生かしてのことか、わからないが。)

モネにとっても美術史にとっても、印象派の出発点となったこの作品は、それほど大きくなく、その後のモネの作品に多くみられる色彩のインパクトはない。手前に数隻の小さな船が浮かぶル・アーヴルの穏やかな海と、うっすら赤く染まる空の様子が朝もやの中のようにぼんやりと描かれ、唯一はっきりした輪郭で描かれた朝日が背景の空に上っている。とても静かな印象の作品だった。

3日前に訪れたばかりのル・アーヴルの港には、大型客船やたくさんのボートがあって、この絵の様子を思い浮かべることができなかった。でも実際に絵を見たら、記憶の中のル・アーヴルの風景からたくさんの船が消え、モネが見た通りのル・アーヴルの海が見えたような気がした。モネが得た「印象」が伝わってきたような、そんな感じだった。

現在のル・アーヴル

これで今回の印象派・ポスト印象派めぐりのフランスの旅はひと段落。プロヴァンスからノルマンディー、そしてパリまで、駆け足で廻った9日間だったが、芸術家たちの視点に思いをめぐらせながら、自分の目で見て、感じた風景は、いつもの旅以上に記憶に残った。

アートをめぐる旅、これからも続けよう。