2013年5月19日日曜日

永久の紙メディア?

パリのサン・ジェルマン通りに、ルイ・ヴィトンが昨年12月から1年間の期間限定でオープンした「キャビネ・デクリチュール(Cabinet d'Ecriture)」を訪れてみた。ここには「書く」ための商品が集められており、万年筆、様々なインク、紙、手帳などが並ぶ。携帯用ライティング・デスクを内蔵した昔のトランクや、ペンやインクを収納する持ち運びケースなど、旅先で書くことがいかに重要だったかを示す品も展示されている。

普段、手書きでものを書くことが減っている人は多いと思う。

以前、私は旅行に行くと、家族や友人に必ず絵ハガキを送った。郵便と固定電話しか通信手段がなかったし、ひとりひとりに絵ハガキを選んで買って、書くのも楽しみのひとつだった。私も人から旅先の絵はがきを受け取ることも少なからずあった。今はメールがあるし、絵ハガキを書くことも、受け取ることもなくなった。

にもかかわらず、なぜか絵ハガキの市場は縮小している様子がない。世界中どこの観光地に行っても、どの土産店にも必ず絵ハガキはあるし、これ以上の万国共通アイテムはない。店先に並ぶ絵ハガキは古びてはいないので、それなりに売れて回転しているらしい。観光地に限らず美術館のショップでも、常に絵ハガキは欠かせないグッズとなっている。

そんなに多くの人々が絵ハガキを書くために買っているとは思えない。飾るため、見るために買うのはわかる。でも、だったら裏は白紙でいいはずだけど、たいていは切手を張る欄や宛名を書く罫線が入ってる。

メールやデジカメ、デジタルフォトフレームの出現にも全く動じず、且つ、もはやハガキとしての本来の用途では使われていないのに、昔の形を維持し愛され続けている絵ハガキって、いったい何なんだろう?

デジタル化で世界中の新聞社が広告料や購読料の売り上げを減らし、書籍の電子化が進む中、絵ハガキは不動の地位を保つ不滅の紙メディアとして残るのかもしれない・・・と思う。