2016年6月11日土曜日

北欧デザインとアートの旅 ②ルイジアナ美術館

コペンハーゲン市内から北へ車で1時間ほどのところにある、ルイジアナ美術館(Louisiana Museum of Modern Art)。デンマークで最大のモダンアートコレクションを持つ。

よく手入れされた広い庭園を囲むように建物があり、庭園にはヘンリー・ムーア、リチャード・セラなどの作品が点在している。海沿いのコールダーの向こうには、スウェーデンが見える。

学芸員の方の案内で館内を見学し、ここの由来を聞いた。創立者のKnud W. Jensen氏は、もともとここをデンマークのモダンアートに特化した美術館にしようとしていたのだが、ドイツのドクメンタで見た海外のアートに触発され、世界のモダンアートに方向転換したそうだ。

ちなみに、何故「ルイジアナ」なのか、誰もが聞く質問の答えは、建物の元のオーナーの奥さんの名前がルイーズだったから。アメリカの州は関係ない。


コレクションは第二次世界大戦後の彫刻と絵画が中心で、ヨーロッパのヌーヴォーレアリスム、アメリカンのポップアート、そして90年代以降のコンテンポラリーアートなど、今でも拡大を続けている。広い館内では常設展示の他、常にいくつかの興味深い企画展示をやっている。訪問時はオプアート&キネティックアートを含む3つの企画展が進行中だった。


今年の初めにかけて開催した「草間彌生展」には、美術館側の予想をはるかに上回る観客が訪れ、草間氏のデンマークでの認知度を更に高めたらしい。常設コレクションの鏡の部屋は、見学を待つ列ができていた。

一番印象に残っているのは常設の「ジャコメッティ・ギャラリー」。新緑と池を背景に、こんなにすがすがしく立っているジャコメッティは見たことがない。


緑の庭園を散策したり、広いショップやカフェで時間をつぶしたり、海を眺めながらソファで休憩したり、アートをのんびり見ながら日がな一日過ごせる美術館。是非時間を取って訪れたい。


2016年6月7日火曜日

北欧デザインとアートの旅 ①建築クルーズ

最近、北欧の建築やデザインが気になり、思い立ってコペンハーゲンに行ってきた。

東京では早くも真夏日が観測されていた5月下旬、デンマークでは春が始まったばかり。街中の新緑が鮮やかで、色とりどりの花が咲いている。北欧の春は足が速いのか、到着した日には薄手のコートが必要だったのが、翌日、さらに翌日にはどんどん暖かく、日差しが強くなり、初夏のような陽気になった。

北欧の中でもデンマークは、モダン様式の手本とされるアルネ・ヤコブセンや、シドニー・オペラハウスのヨーン・ウツソン、「イージーチェア」のフィン・ユールなど、優れた建築・家具デザイナーを輩出している。

ヤコブセンの建物や、ちょっと洒落た北欧デザインは、コペンハーゲンの街を歩くだけでもある程度見ることができる。

でも今回はプライベートボートをチャーターし、運河から街を見てみることに。このクルーズでは、有名な建築物だけでなく、コペンハーゲンに暮らす人々のライフスタイルや住宅トレンドも垣間見ることができる。

ボート乗り場は、カラフルな建物群が並ぶニューハウンにある。この辺は昔は歓楽街で、お客が行きつけの店をすぐに見分けられるよう、それぞれの店が違う色にペイントしたのが今でも残っているのだそう。現在は健全なカフェやレストランが並ぶ人気の観光地。


運河に出てまず目に入るのは新しいデンマーク王立劇場。水上にせり出したプラットフォーム上で、レイヤーごとに色とデザインが異なるガラスが美しく光る。

次は「ブラック・ダイアモンド」王立図書館。黒い花崗岩で覆われた直線的な外観からそう呼ばれる。

コペンハーゲンは、ガラスを多用した、スタイリッシュで触ると冷たそうな新しい建築と、暖色系の歴史的な建築が共存して一つの街並みを作っている。

倉庫街のクリスチャンハウンには、あのNomaが入っている古いレンガの建物もある。

余談だが、Nomaは今年いっぱいで一度クローズし、来年、同じエリアの別の場所に新しい店をオープンする。アスファルトを掘り起こして土の畑を作り、屋上にグリーンハウスを設置したアーバンファームの中に店を置くという。新北欧料理を世界的な流行にまで高めたNomaの新たな挑戦が、また新しい流れを作るのかも。

更に運河を進み、デザインマンションが並ぶ新興住宅地へ。市内中心から近いこの辺りには、比較的裕福な若い世代が夫婦や家族で暮らす。どのマンションでも、バルコニーには必ず椅子とテーブルがある。夏が短い北欧の人々は、貴重な太陽の光を浴びる機会を逃すことがないよう、なるべく外で過ごすのだそうだ。ちょっと驚いたのは、こうした新しいマンションには必ず船着き場があり、素敵なモーターボートが係留されていること。ベニスのゴンドラのように、自宅から直接自分のボートで運河に出るのだ。自転車代わりに。なんて素敵な生活。


最後は「光の巨匠」ヘニング・ラーセンが設計したオペラハウス。
ちょうどマチネをやっていたのでロビーに入ることができた。




外光に溢れ、曲線と直線が交差するロビーは、不思議な船の中のようだった。



クルーズの途中、有名な人魚姫の像を背中から見た。像の向こうでは、たくさんの観光客たちが小さな人魚姫の写真を撮っていた。それもいいけど、運河に出れば、もっと色々なコペンハーゲンが見られるのに!と思いながら通り過ぎた。

2016年5月14日土曜日

旅するルイ・ヴィトン展

麹町で6月19日まで開催中の「空へ海へ彼方へ 旅するルイ・ヴィトン展 (Volez, Vogues, Voyagez - Louis Vuitton)」を見に行った。

会場はこのために作られた特設会場。正面からはわからないが、かなり奥行きがあり、ルイ・ヴィトンワールドが繰り広げらてている。


木箱製造職人としてスタートしたルイ・ヴィトンが1854年に自分の店を創業して以来、ルイ・ヴィトン社が手掛けてきた作品の数々が展示されている。各時代の旅のスタイルの変化と、それに応じた旅の道具を見るのは、ルイ・ヴィトン愛用者でなくても楽しめる。


そして、昔のヨーロッパ人たちは、旅の間もおしゃれに全く手を抜いていなかったことに感心!帽子、靴、ステッキなどを、用途に合わせてオーダーした専用トランクに詰めて持って行った。










時には「携帯用」洋服ダンスまで持って。























砂漠でお茶を飲むためのセットだって。過酷な環境下でも日常生活の快適さを可能な限り再現する努力。本当のグランピングは、この時代にあったのだ。


これらのトランクは旅行用に軽量に作られたとはいえ、現代の素材とは比べ物にならないくらい重いはず。こうした主人の膨大な旅支度を運ぶスタッフを含めると、旅の一行は結構な人数になったに違いない。




今でこそ、富裕層であっても自分で4輪キャスターが付いた軽量スーツ―ケースを転がして空港カウンターへ持ち込み、重量チェックを受けてチェックインするのは普通のこと。持っていけるものには限界があるが、現地で調達できるものも多いので、困ることは少ない。でも、長い道中を思いながら、重量オーバーを気にする必要もなく、お洒落道具や、自分にとっての必需品を詰め込む旅の準備作業は、今より楽しいものだったのかもしれない。そんな時代の旅の魅力にに思いを馳せた展示だった。





2016年3月21日月曜日

「サイモン・フジワラ ホワイトデー」展で思ったこと

東京オペラシティ アートギャラリーで開催中の「サイモン・フジワラ ホワイトデー」展を見た。

Simon Fujiwaraを知ったきっかけは、最近訪問する機会を得た都内のプライベートミュージアム「游庵」で、彼の企画展示を見たこと。その時はなんだか変わったアーティストだなという印象だったが、調べたらオペラシティでも個展が開催中と知り、行ってみた次第。

オペラシティでの展示は、スペースを生かした大型の作品が中心。インスタレーション2点が展示された薄暗い廊下を通り、明るく広いフロアに出る。


北朝鮮の美術制作工房に注文したという牛乳の絵が目を引く。ガラスの箱の中では毛皮職人(?)が作業中。


ここで展示されていた、壊れた陶器とハンマーを並べた作品「再開のための予行演習」。


これ、入り口で配られる展示案内をよく読まないと(もしくはよく読んでも)わからないのだが、本物のバーナード・リーチの作品を壊したものなのだ。(これが、彼を変なアーティストだと思った所以。)
これを壊す過程そのものを映したビデオ作品を、前述の「游庵」で見たのだが、ほんとに壊すの!?と、ちょっと嫌な気持ちになった(しかも本当に本物らしい)。

いくら彼がお金を出して購入し、所有していたものだとしても、優れた美術品は文化財として、後世に残す責任があると思うのだ。ましてや物故者の作品、再生は効かない。リーチの作品を壊した自分と、その作品(残骸)を公開することで、どういうアイデンティティを表現したかったのか、私には今ひとつ理解できなかった。

とはいえ、それ以外の作品は楽しめた。例えば、今回最も大型の作品だった「レベッカ」。西安の兵馬俑を思わせる、テラコッタ色の石膏像がずらりと並ぶ。


これは、元の遺跡を傷つけることなくモチーフにして、アーティストなりのリメイクを果たした作品。整然と並ぶレベッカ像は圧巻だった。

これも最近、森美術館で見た「村上隆の五百羅漢図展」では、古代思想を現代的な色彩を表現で緻密に表現した大作に圧倒された。リメイクやアレンジは、元の作品へのリスペクトがあって初めて、元の作品を知らない同時代の人の共感も得られるのだと思う。


2016年3月12日土曜日

東京タワーを臨むアートフェア

汐留のパークホテル東京で開催されているアートフェア「Art in Park Hotel Tokyo 2016」へ。
普段からこのホテルは、アートホテルとしてのアイデンティティを大切にし、色々な企画を展開していて面白い。

今回のフェアはホテルの2フロアの客室を使い、約40のコンテンポラリーアートのギャラリーが出展。アート大阪とのコラボレーション企画なので、大阪を中心に、東京以外のギャラリーが半数以上を占めていた。


客室は各ギャラリーの展示に任されており、限られたスペースと構造の制約の中、ホテルルームのインテリアと一体化した自然な展示も、ベッドが邪魔で仕方なさそうなギッシリな展示もあった。本来、ホテルルームを箱にした展示は、「あ、この作品は部屋にこうやって飾るといいんだ」という気づきを提供できる機会だと思うので、各社のセンスの見せ所でもある。

ホテルの売りでもある東京タワービューの部屋では、景色も展示の一部として一役買っていた。


気軽に買える価格帯の作品も多いので、ピンとくる作品に出会えればラッキーと思って廻るのも楽しい。私も大阪から出展していたギャラリーで、川北ゆうさんの、バッグに入る大きさ(小ささ)の作品を買って帰った。


2015年12月20日日曜日

ホテルロビーのアート空間

ホテルのロビーに入った時に受ける印象は、その後、部屋に入った時の印象を左右するくらい大切なものだと思う。

ソウルのThe Shillaのロビーのオーナメントには、思わず足を止めた。


アーティストはSeon Ghi Bahk。チャコールやアクリルビーズを糸でつりさげた「Aggregation」シリーズで知られる。この作品もその一つ「An Aggregation 130121」。赤と白の透明なビーズとナイロンの糸が、光を受けて幻想的なカーテンを作っている。

The Shillaは2006年からBahkの作品を展示してきているとのこと。

ツリーがなくても、どこよりもホリデーシーズンの華やかさに溢れた美しい空間だった。

東大門デザインプラザ

ソウルのザハ・ハティド建築、東大門デザインプラザ。
2014年3月にオープンして以来、ソウルの新名所として注目されるスポット。世界最大の「三次元不定形建築物」だそうで、とにかく直線が一切ない。表面は形が異なる45,000枚以上のアルミパネルで覆われていて、外から見る限り、窓もない。

建物はミュージアム棟、アートホール棟、デザインラボ棟に分かれている。分かれている、と言ったが、有機的につながっている、という表現のほうがしっくりくる。
内部も非常に曲線的で、ミュージアム棟の回廊はゆるやかなスロープが4階まで続いている。通常、建物の中では、角を曲がるとか、階段を上るという直線に頼った行為で自分の位置を認識する癖がついているのだと、改めて実感した。ここにいると、自分がどの辺にいるのかわからなくなりそうになる。

ここでは常に展覧会やイベントが開かれており、訪れた日は、イタリアのデザインアーティスト、アレッサンドロ・メンディーニのカラフルな企画展をやっていた。

展覧会も面白かったが、初めての訪問ではその建物のインパクトのほうが記憶に残った。こういう建物が、東京にも出現したかもしれなかったのか、と、あったかもしれない未来に想いを馳せる。