2015年12月20日日曜日

ソウルでアート散歩

ソウルのアートエリアと言えばサムチョンドン(三清洞)。

レトロモダンな雰囲気が人気のエリアに、美術館や中小様々なギャラリーが集まる。通りを歩くだけでも楽しいけど、時間があるならアート鑑賞しながらのお散歩がお勧め。

最寄りの地下鉄のアンクック(安国)駅から景福宮沿いにサムチョンドン通りを北上すると、まず目につくのがGallery Hyundai(ギャラリー・ヒュンデ)。「ヒュンデ」とは「現代」を意味し(自動車メーカーの名前と一緒)、その名の通り1970年の回廊以来、このエリアの現代アートギャラリーの先駆けとして運営してきた。

この日は30代の韓国人アーティストKijong Zinの個展をやっていた。

何軒かのギャラリーを見ながら道沿いに進むと国立現代美術館(MMCA)。2フロアに渡る展示スペースで、韓国および海外のアーティストの様々な企画展が同時開催されており、1枚のチケットで全てみられる。

「動くドローイング」で知られる南アフリカのウィリアム・ケントリッジや、リーウム美術館にも作品があった現代的水墨画のSuh Se Ok(徐世鈺)等の他、韓国とオーストラリアの若手アーティストのグループ展など、それぞれが印象的で、バラエティに富んだ展示だった。


そのまま更に道を進み、サムチョンドン通りが右にそれる二叉路を左に進むと、大統領官邸の警備エリアに入る。警備の警察官に呼び止められたが公道なので、行先を告げて荷物チェックを受けたら通してくれ、親切に道も教えてくれた。

カフェがある交差点を右折した静かな通りにもギャラリーが数軒並ぶ。

比較的大きなスペースを持つPKMギャラリーでは、ベルギーのCarsten Hollerの個展を開催中だった。

そしてサムチョンドン通りにぶつかってまた右折。韓国の伝統的な建物を改築したカフェやブティックが並ぶおしゃれなメインストリートに出る。

この通りには、もっと気軽に入れる雰囲気のギャラリーやインテリアショップが点在。買い物のついでにアートを楽しめる。

2、3時間で廻れるアート散歩ルート。洗練されたソウルが見られる。




2015年12月13日日曜日

リーウム美術館 

行きたかったリーウム美術館(The Leeum, Samsung Museum of Art) を見に、ソウルへ。


サムソンの膨大なアートコレクションを擁するこの美術館は、梨泰院の近くの大通りから少し入った静かで洗練されたエリアにある。

リーウムを構成する3つの建物はそれぞれ著名な建築家が手掛けている。上の写真のアニッシュ・カプーアの彫刻を囲む建物のうち、スイス人マリオ・ボッタによるテラコッタの城風のMuseum 1(写真真ん中)は、陶磁器を中心とした韓国の伝統美術を展示。

フランス人ジャン・ヌーヴェルによるMuseum 2(写真右)は韓国と海外の現代アートを展示。建物にはガラスと錆びたステンレススチールを使用している。錆びないはずのステンレスが錆びているという、存在そのものがパラドックスな素材が、様々に解釈される現代アートの作品群を包んでいるのが面白い。

そしてオランダ人レム・コールハースによる児童教育・文化センター(写真左)は企画展用のスペース。主張せず、建物を有機的につなぐ線としての存在を念頭にデザインされたらしい。

館内では、デジタルガイドを借りて廻る。これが、さすがサムソン、なかなか秀逸なガジェットだった。スマホくらいの大きさの端末を持ち、イヤホンを耳にかけてて作品に近づくと、自動的にその作品の説明が始まる。そして音声だけでなく、作品の写真と文字による説明も画面で確認でき、気になる作品はあとでリストから選んで聞き直す(or 読み直す)こともできる。音声ガイドにペースが合わないときも、これなら必要な情報を得やすい。


この美術館ならではのみどころはやはり、Museum 2の現代アート。日本ではあまり見る機会が多くない、戦後の韓国人アーティストたちの作品を、同時代の欧米のアーティストの作品と共に、共通したテーマの下に見ることができる。

全ての建物をじっくり見るなら、最低3時間はかけたい。



おまけとして、リーウムで入場料を払うと、分館のプラトー(Plateau)に入れるチケットもくれる。

市庁の近くにあるプラトーは、元はロダン・ギャラリーと呼ばれていて、今でも1階のスペースにロダンの地獄門がある。その手前にあるのは、韓国の女性アーティストのMinouk Limの企画展示。この新旧のコンビネーションは結構、絵になっていた。


2015年11月23日月曜日

キューバ・アートの旅 11.ハバナの街角アート

ハバナの街角は、アートで溢れている。
旧市街を歩くと、よく壁画を見かける。



教会のステンドグラスはカリビアンテイストだった。

美しいアールヌーヴォー調のガラス扉の中は、香水屋さんのラボ。

中心地から少し西に外れたところにあるJaimanitas(ハイマニタス)通りは、モザイクアートの名所。この界隈に住むJose Fusterというアーティストが20年ほど前から始めたプロジェクトだそう。静かな普通の住宅街が、一大アートストリートになっている。

ガウディへのオマージュも。なるほど、言われてみれば、バルセロナの公園を思い出す。


見どころが尽きないハバナ。また行かなきゃ。

2015年11月20日金曜日

キューバ・アートの旅 10.Fabrica de Arte Cubano

ハバナには非常に面白いナイトスポットがある。Fabrica de Arte Cubano(ファブリカ・デ・アルテ・クバーノ)、通称FAC。
FACは週末(木曜から日曜)の夜だけ営業する。土曜日の夜、入り口には20時のオープン前から入場を待つ人の列ができていた。工場だった建物を使っている。隣の煙突はレストラン。



2CUC(約2USドル)を払って入る。大きな箱型の建物の中はいくつかのコーナーに分かれていて、巨大スクリーンのあるライブスペースや、数か所のバーカウンターがある。


そして複数のフロアやコーナーに展開されたギャラリースペース。全てキューバのアーティストの作品が、写真、絵画、建築などの企画ごとに展示されている。展示は定期的に入れ替わる。


いずれもきちんとキュレーションされた質の高い展示で、ナイトクラブがついでにアートを飾っているのとは訳が違う。

そこでは20代から60代以上まで様々な大人たちが、時にはダイキリやモヒートを片手に、時には友人と談笑しながら、まじめにアートを楽しんでいた。


毎夜、コンサートなどのイベントも行われる。この日は二人のデザイナーのファッションショーをやっていた。

ダンスも大音響の音楽も無く、アートも、社交も、お酒も楽しめる、大人のためのとても知的なナイトスポット。かといってスノッブでもない。こんな素敵な場所、東京はおろか、世界の他の都市でも一切見たことがない。

ハバナ、うらやましい!






2015年11月19日木曜日

キューバ・アートの旅 9.現代アーティスト・ファイル Kadir Lopez


今回会ったハバナの現代アーティストのラスト、7人目は、Kadir Lopez(カディール・ロペス)氏。

素敵なギャラリースペースを友人アーティストとシェアしている。


ロペス氏のテーマは「時」。キューバの過去を描くことで、現在のキューバのアイデンティティへのつながりを示唆する。

彼もまた、昔のキューバの写真を使う。ロペス氏の右にあるShellの看板のように、古いブリキの看板の表面に同時代の別の写真をプリントした作品を多く作っている。

メディアは看板に限らない。


上の写真の奥の壁にあるのは、代表作の一つ「Havana Monopoly」シリーズの1枚。1920年代から50年代に栄えたカジノやマフィアを中央に描き、縁取りに1959年の革命後にキューバ政府に国有化されたアメリカ企業の株券をに並べている。その後キューバがたどることになる苦難の引き金ともなった儚いモノポリーを、皮肉な華やかさで表現している。

海外にも顧客の多いロペス氏。この作品もドイツのコレクターに売約済みとのことだった。

彼を含むキューバのアーティストの多くが、「キューバのアイデンティティ」を作品の軸としているのは、ある意味、中国の現代アーティストたちと共通するものを感じる。でもそれは必ずしも商業的な成功や、政府の批判を目的としたものではなく、これから西側の世界にもっと巻き込まれていくであろう自国キューバを、愛と期待と、ほんの少しの心配を持って見守っているように思えた。

キューバのアートは、きっとこれから急速な展開を見せるだろう。目が離せない!

キューバ・アートの旅 8. 現代アーティスト・ファイル Frank Martinez

ハバナの現代アーティスト、6人目はFrank Martinez(フランク・マルティネス)氏。

マルティネス氏は、無関係な写真を組み合わせて新しい歴史を作る。キューバとは関係のない、世界で良く知られた写真を使う。

上の写真手前左の作品は、よく取り上げられる「人類は本当に月に行ったのか」問題のパロディ。月面にデッキチェアを描いている。

彼の手法は、まずパソコンで2枚の写真を重ね合わせて合体させ、それをキャンバスに投影し、上からなぞる。最近はもっぱらチャコールを使って描くそう。

その緻密なリアルさが余計に笑いを誘う、マルティネス・ワールド。歴史は本当はこうだったかも?


2015年11月18日水曜日

キューバ・アートの旅 7.現代アーティスト・ファイル Karlos Perez


ハバナの現代アーティスト5人目は、Karlos Perez(カルロス・ペレス)氏。

ペレス氏は50年代のキューバの写真アーカイブから何百枚もの素材を入手し、それを元に作品を描く。写真を印刷した上に加工しているのではなく、全て手で描いている。


扱う題材はごく普通の人々のポートレイト。これからも昔のキューバを題材に描き続けると思うとした上で、ペレス氏は新しい技法にトライしている。

写真だとわからないが、この作品は光の入り方によって見え方が異なる要に描かれている(肉眼で見るのとカメラのファインダーから見るのとでは鮮明さが違うように見えた。)


ペレス氏のように若い世代でも革命前のキューバを題材にするアーティストは多い。政府が否定してきた過去をアートで伝えようとしているのだと、同行の現地アート・ガイドが言っていた。