中庭の作品は定期的に展示替えされる。
膨大なキューバ美術のコレクションを持つこの美術館には、植民地時代から現代までのキューバ美術が時系列に展示されている。全てじっくり見るには1日あっても足りないので、アートガイドのAdolfoの案内でポイントを絞って見学した。
キューバ美術が面白くなるのは20世紀から。欧米との行き来が自由だった時代、キューバの美術や建築はヨーロッパのキュビズムやアールデコなどの流れを踏襲しつつ、ラテンアメリカのタッチをミックスした独特のスタイルを展開する。代表的な絵画作品のひとつはVictor Manuel Garciaの「La Guitana Tropical (トロピカル・ジプシー、1929年)」。Adolfoによるとキューバにはジプシーはいないそうだが、典型的なキューバ女性象をキュビズムのタッチで描いたこの作品は、キューバのモナリザとして広く知られている。
大戦中も砂糖産業で潤い、アメリカとの蜜月でカジノが栄えた華やかな時代の楽天的な雰囲気は、革命後の60年代から変化する。グロテスクな暗いタッチの作品や、タブーである政府への批判を忍び込ませた作品、思想的な作品が増える。もっとも、それらが国立博物館に展示されているということは、それも含めたキューバの歴史を、アートを通じて政府が示唆しているということでもある。
時代背景とともにキューバ美術の流れを駆け足で廻るだけでも、かなり見ごたえがある。ハバナに来たら早めに訪問したい場所。
美術館見学後は、すぐ近くのBacardiビルも必見。エジプトっぽさをミックスしたアールデコ様式に、華やかな時代の面影が見られる。